日本人の死亡原因のトップはがんであり、誰もががんにかかるリスクを抱えているからこそ、健康なうちにがんへの備えについて真剣に考えておきたいところです。
ここでは、がん保険に加入するメリットやがん保険で受けられる保障について、くわしくご紹介します。
目次
がん保険とは
1-1.がんに対する保障に特化した保険
日本人の2人に1人ががんになる時代。 だからこそ、がんになったときの備えは万全にしておきたいものです。
がんになると、治療や通院などで出費が続きますが、保険に入っておくと安心です。 保険にもいろいろな種類がありますが、がんに対しての保障が手厚いがん保険へ加入しておくと、万が一のときに備えられます。
がん保険とは、がんと診断されたときやがんで入院や治療が必要になったときに給付金が支給されるがんに対する保障に特化しているのが特徴です。
1-2.がん保険の保障期間
がん保険は、加入した日から保障がスタートするのではなく、保障されるまでに一定の待ち期間(免責期間)があるため、注意が必要です。
多くのがん保険には、保障開始までに90日の免責期間が設定されているケースがほとんどで、この期間中にがんと診断された場合は、残念ながら保障の対象外となります。
免責期間が設けられているのは、公平を期すためと給付金の悪用を防ぐためです。
1-3.保険料の払込期間
保険料の払込期間は、保険期間中払い続ける「終身払い」または、現役世代のうち、たとえば60歳までに支払いを終わらせる「短期払い」を選ぶことができます。
終身払いは月々の保険料負担を抑えられる点が魅力的ですが、老後の保険料負担が重くなる可能性があるのが難点です。
短期払いは月々の保険料は高くなりますが、老後に保険料を支払う必要がなくなり、老後資金に余裕ができます。
一概にどちらの払込方法が良いとは言い切れませんので、老後のマネープランなども含めて自分に合った払込期間を選ぶことをおすすめします。
2.がん保険の必要性
健康保険に加入しているので、がん保険は必要ないと思っている方もいますが、実は健康保険だけでは十分な治療を受けられないのが現状です。
2-1.健康保険だけではカバーが難しい?
日本は国民全員が健康保険に加入するように義務づけられており、少ない自己負担で医療サービスを受けられます。
しかし、がんの治療には多額の費用がかかることがほとんどで、通院や入院などで医療費が高くなります。
健康保険では所得に応じて負担する医療費の上限額が決められており、それを超えた分については還付される高額療養費制度を利用できますが、この制度で該当するのはあくまでも健康保険の対象となる治療費のみで、入院中の食費や交通費、雑費などは含まれません。
そのため、健康保険だけではがん治療にかかる費用負担を十分にカバーできない可能性が高いのです。
2-2.治療費以外の出費が多い?
がんにかかってしまったときに、費用負担となるのは治療費だけではありません。 それ以外にも、以下のような出費がかかってくるため、トータルの費用が高額となる場合があります。
- 通院やお見舞いにかかる交通費
- 家族の宿泊代(遠方の病院に入院した場合)
- 入院中の食事代
- 差額ベッド代
- ウィッグ代
さらに、がん治療中に働けなくなってしまったら、仕事と治療の両立が難しくなり収入減も考えられます。 がん治療にお金がかかるうえに、生活費が不足してしまうため、貯蓄を取り崩したり、生活水準を下げたりするなどして、対策をとることになるかもしれません。
2-3.転移や再発で治療が長引く場合も
がんは転移や再発のリスクがあります。
最初にがんが発生した部位の治療が終わっても、その後の検査で転移が発覚したり、数年後に再発したりする可能性があるということです。
そうなると結果的に、がん治療が長期間にわたってしまうため、そのぶん、治療費やその他の出費も増えてしまいます。
2-4.治療の選択肢が広がる
がん治療の技術は年々進歩していますが、先進医療による治療については、健康保険の適用外となっているため、費用はすべて自己負担になります。
最近のがん保険はほとんどの商品が、先進医療の費用に対応しているので、 後になってから、「あのとき先進医療を受けられていたら・・・」と悔やまないためにも、事前にがん保険を準備しておくと安心してがん治療をスタートできます。
3.がん保険で受け取れる給付金
3-1.がん診断給付金
がんと診断されたときに受け取れるのが、「がん診断給付金」です。(保険会社によって呼び方が変わることもあります)
受け取れる金額については契約した保険の内容やタイプによって異なり、50万円から200万円以上と、まとまったお金を受け取れること、その使い道が自由だということが大きな特徴です。
3-2.入院給付金
がんの治療や手術をするために入院したときに給付されます。 「1日1万円」といったように、入院日額と入院日数に応じて給付金の額が決まります。
また、医療保険の場合は、入院給付金を支払う限度日数が決まっていることがほとんどですが、がん保険では日数無制限で給付金が支給されます。 そのため、長期入院や入退院を繰り返した場合でも、給付金を受け取れます。
3-3.手術給付金
所定の手術を受けたときに、入院給付金とは別に支給されます。
保障される金額については、「入院給付金の○○倍」という形で決められるか、外来での手術か入院を伴う手術かで手術給付金があらかじめ決められているかの、どちらかのケースがほとんどです。
例を挙げると、外来での手術は5万円ですが、入院を伴う手術の場合は20万円といったように、入院での手術のほうが給付金額が多くなることが多いです。
3-4.通院給付金
がん治療のため通院した場合に受け取れます。
入院前後の通院が保障される商品や、また、通院での放射線治療など入院を必要としない場合でも保障される商品もあり、保険商品によって給付条件が異なります。 給付金額は一回の通院につき5,000円から10,000円が一般的です。
3-5.抗がん剤治療給付金
所定の抗がん剤治療を受けたときに給付され、入院、通院を問わず給付金が支給されるタイプが一般的です。 抗がん剤治療などを受けた月ごとに、10~30万円を支給されるタイプが多いです。
3-6.先進医療給付金
厚生労働省が認めるがん治療に関する先進医療を受けたときに支給されます。 先進医療の「技術料」については健康保険の対象とならないため、全額自己負担になることがほとんどです。 技術料の部分について上限はあるものの、1,000万円から2,000万円の範囲内でかかった技術料分について先進医療給付金を受け取れるタイプが一般的です。
10万円(上皮内がん)
ホルモン剤治療給付金
5万円(乳がん・前立腺がん
のホルモン剤治療)
10万円(上皮内がん)
ホルモン剤治療給付金
5万円(乳がん・前立腺がん
のホルモン剤治療)
4.診断給付金のさまざまな使い道
4-1.治療費(入院、通院)どちらにも使える
医療技術の進歩で、がん治療は入院よりも通院が主流になりつつあります。
がんが発生した部位や、程度にもよりますが、普段の生活をおくりながら、治療を進められることが大きな魅力です。
なお、受け取った給付金については課税の対象となりません。
保険の種類や受け取った給付金や保険金によっては課税されることがあり、それだけ自由に使えるお金が少なくなってしまいますので、その点助かります。
ただし、確定申告で医療費控除を受ける場合は注意が必要です。
非課税のため給付金を申告する必要はありませんが、負担した医療費から受け取った給付金を差し引いた分で医療費控除を申告することになっています。
4-2.生活費にも使える
働き盛りでがんにかかってしまった場合、仕事と治療の両立が難しい場合があります。
仕事を休んだ場合は、勤務先で健康保険に加入していれば傷病手当金が支給されますが、支給額は月給の3分の2、支給期間は最大で1年6ヵ月と決められています。
何も収入がないよりはましですが、それでもがん治療にお金がかかるため、今までより自由に使えるお金が減り、生活費に影響が出ます。
給付金があれば、生活費にも充てることができるので安心して治療に専念できます。
また、自営業者の多くが加入している国民健康保険の場合は、傷病手当金の制度自体がありません。 国民健康保険に加入されている方の場合は、精神的にはもちろん、特に経済的な不安に陥りやすいため、給付金で生活費を賄えると助かります。
4-3.セカンドオピニオンにかかる医療費
診断や治療に納得するためにも、セカンドオピニオンを求める方が増えており、セカンドオピニオン外来を開設している病院も多くあります。
セカンドオピニオンについては、「診察・診断」ではなく、「相談」扱いになりますので、健康保険が使えず全て自己負担となってしまい、病院ごとに料金設定も異なります。
セカンドオピニオンを受けるのにかかる費用を給付金で賄えると、主治医の診断や治療法に納得できたり、新たな治療の選択肢が広がったりするかもしれません。
4-4.入院したときの差額ベッド代や食事代
入院することになり、大部屋ではなく個室を希望したときは、差額ベッド代がかかります。
また、差額ベッド代もそうですが、入院中の食事代や入院用衣服のレンタルなどは、健康保険の適用外ですので、入院日数が増えるとそれだけ金銭的負担も大きくなります。 このほか、入院時にしか使わない日用品などを購入する必要もあるため、その分を給付金でカバーできると助かります。
4-5.リハビリやウィッグの購入にも使える
がん手術後や治療後にリハビリが必要になったときのリハビリ費用、抗がん剤治療で抜けた髪の毛を隠すためにウィッグを購入するなど、様々な用途に使えます。
他にも、知人からいただいたお見舞いのお返しや、会社に提出する診断書の費用などにも充てることができます。
5.まとめ
健康保険である程度治療費や手術費がカバーできるとはいえ、がんになってしまったら治療や入院で多くの費用がかかります。
今や誰もががんにかかるリスクを抱えていますが、がんは不治の病ではなく、医療技術の進歩で治る確率も高くなっており、適切な治療を受ければ元通りの生活を送れる可能性も高いのです。
がん保険は免責期間もあることから、万が一のときに備えて早めに加入しておくことをおすすめします。
そして、がん治療を取り巻く環境は日々変化していますので、そのときのニーズに合うがん保険に定期的に見直しすることも大切です。